待ち望んでいた“夢の装置” ALS医療環境劇的変化へ


自動吸引装置の臨床試験を快諾した野上昭典さんと、介護する妻のひとみさん

 「夜間に患者は安眠でき、大きかった介護の負担も軽減される」―。山本真医師(大分協和病院副院長)と徳永修一さん(徳永装器研究所社長)が、人工呼吸器を使う人たちのために、六年がかりで共同開発した「たん」の自動吸引装置。ALS患者や家族は、完成を待ち望んでいた。

 大分市の野上昭典さん(55)は開発に協力した一人。二〇〇〇年から人工呼吸器を着けており、自宅で妻ひとみさん(50)が支える。「わたしが協力できるなら」と、臨床試験の被験者となることを快諾した。

 昭典さんは文字盤を目で追いながら「自動吸引装置は非常によかった」と感想。「夜間の除去作業がなくなることが最も重要。介護者の高度な技術が要らないので、幅広い人たちの介護が可能になる」。

 日本ALS協会や山本医師によると、県内には百三人のALS患者がおり、うち在宅は約三十人。全国には約六千七百人の患者がいる。「たん」の除去に関しては、皆が同じ悩みを抱えているという。

 「往診先に六つの目覚まし時計があった。夜間、家族が確実に目を覚ますために、時間をずらして鳴るようセットしていた」。山本医師は吸引の自動化を思い立ったきっかけを振り返る。

 「患者が苦痛に感じない方法を探った」と徳永さん。「たん」の安定吸引を目指し、卵の白身やヤマイモを使うなど試行錯誤を繰り返した。「たん」の有無にかかわらず、少量の吸引動作を持続させることに成功した。

 夫を介護している大分市の本田良子さん(66)は「夜中に起きなければならなかった。その暮らしを変える画期的な開発」と期待。日本ALS協会県支部は「全国の患者が待っている」と話す。

 大分大学医学部の熊本俊秀教授は「装置は患者に優しい上、在宅だけでなく、看護師が少ない夜間の医療施設も助かる」と評価した。

 ALS患者に限らず、人工呼吸器を使うすべての患者に有効。市販されれば、世界に需要が広がる可能性があるという。

 安全の最優先を評価

 金沢公明・日本ALS協会事務局長の話 患者や家族の生活に大きな改善をもたらす朗報。特に安全性を最優先した点を評価したい。一日も早く使いたいという患者はたくさんおり、協会としても研究開発を後押ししたかいがあった。


[2005年05月22日09:07]大分合同新聞